トラベルジャーナル20160125「動き出す日本版DMO」

視座「物語の持つ強さ」高岡謙二氏(ジャパンガイド取締役)


  • FIT獲得に必要なのは、世界に向けて語れるストーリーを多く持つこと。
  • 物語は神話やサクセスストーリーである必要はない。彼らにとって身近な出来事や史実から情報を広げられれば、海外向けの発信力は大きく高まる。
  • 例えば、大阪の堂島米会所が世界で最初の先物取引市場だったことを知れば、金融に携わる世界中のひとが興味を持つだろう。そのように、彼らが興味のあるもの(Sushi、Samurai、Ninja、等)を起点に地域のストーリーを組み立てることもできる。
  • 物語を中心テーマに旅をする個人はこれからも増加していく。

Week's Topics


  • 観光庁予算、前年度比2.4倍の245億円に。それまでの「訪日プロモーションへの集中投下」から一転、受け入れ環境整備・観光産業活性化(83億円)に重点。訪日客の消費力を地方に波及させるための観光地域づくりには63億円が配分された。訪日プロモーションには94億円を配分し、JNTOの事務所も14箇所から21箇所に増加。
  • JTB、成長分野の飲食予約事業に参入。旅行サービスとの連携、旅行ガイド情報の活用などを通じて、ぐるなびや食べログなどとの差別化を図る。
  • 経産省、観光動向予測へデータ解放。混雑時期や属性把握、プロモーション立案を支援。会員登録すれば誰でも利用できる。
    < 観光予報プラットフォーム https://kankouyohou.com >


News in brief

  • 免税対象金額を引き下げ
    5/1から消費税免税制度が拡充される。免税対象金額の引き下げ、海外直送の手続き簡素化、免税手続きカウンター制度の利便性向上が柱。
  • 日本空港ビルが免税販売会社
    1〜5億円(日本空港51% ビックカメラ49%)を出資し、合弁会社を設立。
  • 日本文化体験予約サイト開設
    4ヶ国語対応、オンライン決済も可。地域ブランド研究所は、訪日外国人向けの日本文化体験予約サイト「アトラクティブジャパン http://attractive-j.com/en-us ※1/29現在閲覧不可能」を開設した。英語、中国語(繁体字)、韓国語、日本語の4ヶ国語に対応する。海外の旅行会社や個人旅行客から、忍者やサムライ体験、メイドツアー、舞妓ショー、和食づくり体験など、日本文化を体験できるプログラムへのニーズは高かったが、受け入れ施設側に情報発信や他言語化などのノウハウが無い状態にあった。今回のサービス提供により、外国人観光客は同サイトからジャンル・エリアなどを選択し、好みの文化体験施設をオンラインで直接予約・決済できるようになった。現在は台湾、韓国、香港、タイ、中国、シンガポール、マレーシア、ベトナム等の現地旅行会社と提携しているが、欧米、オセアニアにも提携先を拡充する。品揃えは、対象エリアを東京、大阪、京都からスタートし、今後は北海道、東北、中部、中国四国、九州方面にも広げ、200プログラム以上を提供していく予定。


From the world


  • ウーバー・トラベル誕生か
    ライドシェアのウーバーが12月中旬に旅行メタサーチに似たデジタルインターフェースに関する特許を取得したことがわかった。航空や鉄道などに加え、「ラストマイル」としてウーバーの手配を組み合わせることが想定されている。

特集「動き出す日本版DMO」


  • 観光立国宣言以降、にわかに注目を浴びた観光事業に各地域が取り組んだ「着地型旅行商品」の開発だったが、成功例は多くない。その背景には、着地型旅行商品は観光地域づくりのほんの一部分であり、それを含む全体(マーケティング、販売、人材確保、アフターケア、など)を見る視点が欠けていたことがある。
  • さらに、そもそもの目的である「観光振興」を図るには、様々なステークホルダー(旅行・宿泊・交通などの民間事業者や、自治体、地域住民)などの関与が必要となる。
  • それらステークホルダーの「司令塔」に、公平を旨とする行政はなり得無い。そこで注目を集めているのが、地域観光づくりの司令塔となるDMO(Destination Management Organization)である。
  • 観光先進国にはDMOの事例が多く見られる。それらの共通点は、①幅広いステークホルダーが参加していること、②統計データ(または政府との連携)に基づくマーケティング機能を有していること、③資金(事業売り上げ、補助金、観光事業者からの会費、など)を確保して自律的・継続的な活動をしていること、の3点。
  • 日本政府は昨年11月18日に日本版DMO候補法人の登録制度を創設し、12月15日から候補法人の登録を開始した。登録された情報は関係者で共有され、支援方法などが検討される。
  • 日本版DMOの登録区分は3つ(広域連携DMO、地域連携DMO、地域DMO)に分かれている。また、登録要件には①行政を含む幅広い分野からの参加者があること、②組織内に行政団体などをメンバーとする委員会等があること、③行政や関係団体から構成される協議会等を設置すること、のいずれかの条件に該当すること。また、その組織は法人格を取得していること、意思決定の仕組みが構築されていることも条件とされている。法人であれば登録可能であるが、政府では社団法人が馴染みやすいとしている(NPO法人はマネジメント人材に意思決定権限が集中していないために責任が分散する)。
  • その他、自律的・継続的に活動するための安定的な運営資金があることも要件であり、行政の補助支援策が重要な財源とみられている(その他は収益事業、施設管理の受託料、DMO参加者からの会費、など)。
  • もう一つの重要な要件は、マーケティング機能を持つこと。各種データ等の継続的な収集・分析、データ等に基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確率。

Seminar「ショッピングツーリズムABC」新津研一氏(ジャパンショッピングツーリズム協会専務理事)


ツーリズム市場の特殊性とは。

  • 特殊性1)客数が予測できる
    旅行会社、航空会社から提供されるデータをもとに、明日から数ヶ月先の客数まで、日次ベースで発地・着地空港別に予定数が把握できる。
  • 特殊性2)100%リアル
    大変な時間、体力、手間をかけて来店される消費者の嗜好は、ECのそれとは異なる。
  • 特殊性3)BtoBtoC
    自分の商品・サービスの情報を(Bto)事業者を通じて(Bto)訪日ゲストに伝える(C)ことが有効になるケースが多い。特に旅程決定に深く関わる旅行会社、旅行予約サイトなどの影響力は多大。長期にわたる有効なパートナーシップの確率が求められる。
  • 特殊性4)急激な成長市場
    未来を読む力、兆しを掴む力が求められる。
  • 特殊性5)競合相手は仲間
    縮小する市場においては競合相手は敵。拡大する市場においてはタッグを組むべき仲間。

Column「ナベケン流 インバウンドの教科書・糸魚川の挑戦」


  • 新潟県糸魚川市の取り組みに注目している。
    • 糸魚川の青年会議所が原動力となり、白馬村に滞在するスキー客に糸魚川の夕食を食べてもらうための「糸魚川シーフードシャトルバス」の運行を1月16日からスタート。
    • 白馬村の宿泊施設は300、対して飲食施設は30。夕食難民問題を「地域の問題」と捉え、広域の関係者と連携してバス運行につなげた。
    • 関係者は、これを契機に糸魚川の魅力を発掘し、地域を元気にしたいと意気込んでいる。
  • インバウンドで地域創生という合言葉は、地域の力を結集させてこそ成り立つものと再確認した。

本原稿は、株式会社トラベルジャーナル社発行「TRAVEL JOURNAL」の記事を抜粋して掲載しております。詳細につきましては、購買の上ご購読をお願いいたします。

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